
2025
GRAND PRIZE
Grand Prize
La Reine Charlotte(シャーロット王妃)
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Year:
2025
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Size:
710×1180mm
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Material/Technique:
海図にインク
線が絵に変わる──1989年、フランス・グルノーブルにて独学で絵画、彫刻、ドローイングを始める。線が絵へと変わる瞬間、彼女は日常から解放され夢をみる。そして、自由に形を創造することで開かれる無限の表現への可能性は、彼女の大きな力となるという。生物学、科学、民俗学への深い関心を持ち、“生命の進化”は、創作活動の中心的なテーマとなっている。昆虫や植物、動物など、自然界に存在する驚くべき形や色彩に着目しながら、人と植物、動物とを溶け合わせることで、豊かで多層的な世界を描き出している。長い時間をかけて緻密な点描を積み重ね、無数のディテールを描き込んでいくことで、作品に独特の深みをもたらしていく。キャンバス、トレーシングペーパー、古い海図や歴史を宿す古い紙など、多様な素材を用いることも彼女に新たな着想をもたらし、未知の旅へと導いている。
審査員員評

ハリエット・サーモン
Harriet Salmon
エヴリン・ポスティックの《La Reine Charlotte(シャーロット王妃)》(2021年)は、その際立った美しさと高い完成度が非常に印象に残る作品で、今回、見事グランプリを受賞した。カナダのブリティッシュコロンビア州の古地図上に描かれた本作品には、海を漂う生物、あるいは地球外生命体ともとれるような形が表現されている。複雑な線が地形図と重なり、交差することで、モアレ模様のような視覚的効果を生み出しており、伝統的な版画やエッチング技法を想起させる。作家は羅針図など地図上の図像的要素を巧みに用いながら、異形のフォルムや画面空間を前面に際立たせ、自在に操っている。
ポスティックの作品世界には、不思議な生命体や動植物・微生物がうごめく、ひとつの成熟した美的・概念的宇宙が築かれている。そこに現れる生命体は、地図や図形、線、形が融合した存在で、さまよう魂のように漂っている。それらに大小のスケールはなく、大陸ほどの大きさにも、あるいは顕微鏡のスライドガラス上で押しつぶされた微小な存在にも見えるのだ。
作家プロフィール
エヴリン・ポスティック
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国籍:
France
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